[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] : 「────ッ、ぅ…アアアア゛ッ!!!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「────桃、どうしたのよ…桃…!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : あの時の記憶は、鮮明じゃない。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 覚えているのは、散り散りになった断片的なモノ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : その一つは、自らの友であるピンク髪の少女が苦しみだして。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 彼女の魂の器、『ソウルジェム』が…
[メイン] 陽夏木 ミカン : ────『魔女』へと、変貌していく姿だった。
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……っ、ぅ…」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 服はボロボロになりながら、友の”遺体”を抱え。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 小動物のような、白い生物の前へと立つ。
[メイン] : 「どうしたんだい?僕に武器を向けて」
[メイン] : 「まさか陽夏木ミカン。君が抱えている死体がどうして魔女になったのか聞こうというわけではないよね?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「その通り、よ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「どうして桃は、魔女になったの」
[メイン] : 「どうしてって…簡単なことだろう」
[メイン] : 「魔女は君たち、魔法少女の”孵化”した姿さ」
[メイン] : 「この国では成長途中の女性を少女と呼ぶんだろう?」
[メイン] : 「それなら、魔女になりかけの君たちは魔法少女と呼ぶにふさわしい────」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 上手く、その話は覚えていない。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 怒りの淵から這い出て、ようやく正気に戻った時には。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ただあったのは、その小動物の死体と。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 友の遺体、ただそれだけだった。
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン : 結局、私の手には事実しか残っていない。
[メイン] 陽夏木 ミカン : それも酸っぱく漬けられた飛びっきりの”不幸”。
[メイン] 陽夏木 ミカン : それを…『運が無かった』として割り切るのは簡単だ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ……でも。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 割り切ってしまったら、この運命を飲み込んでしまったら。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 私は……桃は……
[メイン] 陽夏木 ミカン : 『運命に飲み込まれるしかなかった』とでも、言うの?
[メイン] 陽夏木 ミカン : 桃の死は、私にとってそんなもので…いいの…?
[メイン] 陽夏木 ミカン : ………。
[メイン] 陽夏木 ミカン : いいはずが、ない。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 魔法少女は希望を叶える少女。
[メイン] 陽夏木 ミカン : そう言っていた友の気持ちを。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 裏切ることなんか、出来ない。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 自分が自分でなくなってしまった事は、とっても恐ろしい。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 恐怖で身も震える、これ以上不幸を背負いたくもない。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ただ、今は。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
魔女
『自らが殺してしまった同胞のために』
『その罪を背負うように』
『生きないと』
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン : 少女は、羽の付いた髪留めを握り。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 自らが、魔法少女の運命へと飲み込まれないように…
[メイン] 陽夏木 ミカン : そう、願って。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 街へと、繰り出すのだった。
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : そして、坂凪綾名という、まだ幼い少女は
[メイン] スイムスイム : お姫様になるという望みのために
[メイン] スイムスイム : 魔法少女狩りを、繰り返していた。
[メイン] スイムスイム : 脳裏に過る、手に掛けた少女達の、悲鳴。
[メイン] : 「きゃぁああぁああぁあああっっ!!!!」
[メイン] : 「やだ……何で……!?どうしてそんなことをするの……!?!」
[メイン] : 「まだ死にたくないよ……!!お父さん……お母さん……!!」
[メイン] スイムスイム : 道を歩きながら、指を折り曲げ、その少女達の頭数を数える。
[メイン] スイムスイム : ぼーっとした表情で、人として冒してはならない罪に、身を落としながらも。
[メイン]
スイムスイム :
童子らしい、純粋な願いのために。
……ただただ純粋過ぎる少女は、街を歩いていた。
[メイン] スイムスイム : 今日も─────魔法少女狩りをした。
[メイン] スイムスイム : 遠くへ逃げた、追った、やっつけた。
[メイン] スイムスイム : だから帰る。
[メイン] スイムスイム : 「………………」
[メイン] スイムスイム : 辺りをキョロキョロと見渡す。
[メイン] スイムスイム : もう既に雨は上がっており、眩しい太陽の光が差し込むも。
[メイン] スイムスイム : そこは、知らない場所だった。
[メイン]
スイムスイム :
一心不乱に、魔法少女狩りに集中していたためか
来た道が雨でぼんやりとしていて、はっきりと覚えていないためか
[メイン] スイムスイム : 帰路を、見失っていた。
[メイン] スイムスイム : 「……ここ……どこ……?」
[メイン] スイムスイム : か細い声で、辺りをせわしなく見渡しながら
[メイン] スイムスイム : 行く宛も無く、濡れた道路を歩いていた。
[メイン] スイムスイム : ……帰ったら、宿題しないと、いけないのに。
[メイン] : 「……傘持っていったのに雨あがってるなんて、これも一種の不幸じゃ……」
[メイン] スイムスイム : ……どうしよう……。
[メイン] スイムスイム : 「…………?」
[メイン] : ぶつぶつとした声が、綾名へと近づいていき。
[メイン] : 止まる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「────っ、と」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あら、ごめんなさいね…うっかりしてて」
[メイン]
スイムスイム :
不幸にも……いや、"人"殺しの現場近くであったため、誰とも出会わなかったのは幸運ではあるが
今、目の前で出会った少女以外とは誰ともすれ違わなかったため。
[メイン]
スイムスイム :
「……………」
じーー、とミカンを見上げる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 濡れていない傘を持った少女は、ぶつかる寸前だった綾名へと謝り。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……あれ?」
[メイン]
スイムスイム :
無表情で、何を考えているのか分からない
さながら、どこか心細そうな顔で。
[メイン] スイムスイム : 「………お姉さん……」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
ちら、と周囲を見渡す。
結構小さい子…みたいだけど、親御さんは…?
[メイン] スイムスイム : くい、くい、とミカンの袖を持ち、軽く引っ張る。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あなた…お節介かもしれないけど、親御さんはどうしたの? ……あら」
[メイン]
スイムスイム :
「…………」
黙ったまま、ミカンの問いに首を横に振る。
[メイン] スイムスイム : そうしてまた、ミカンを見上げ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 引っ張られたそこに、ぴくりと反応して。
[メイン] スイムスイム : 「………おうち、どこ……?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あら…!いないの…じゃあ……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ああ……迷子、なのね」
[メイン] 陽夏木 ミカン : その問いに、体を屈め彼女と目線を合わせる。
[メイン]
スイムスイム :
スイムスイムは、手ぶら状態で
住所特定に有効となる持ち物は一切持ち合わせておらず。
[メイン]
スイムスイム :
「………」
頷く。
[メイン] スイムスイム : 「………帰って、宿題、しないといけないの」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「それは…大変ね、お母さんとも会いたいでしょう」
[メイン] 陽夏木 ミカン : その言葉を一蹴りするわけにもいかない。
[メイン] スイムスイム : 「…………会いたい」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「うん、そうよね」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……あなたのおうちに関してなんだけどね」
[メイン]
スイムスイム :
「…………」
じっと見て。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「ごめんなさい、私は知らないの。でも」
その目に合わせるように、その瞳の奥を返す。
[メイン] スイムスイム : その言葉に、少しシュン、として。
[メイン] スイムスイム : 「……帰りたい……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「それを探す手伝いくらいなら、私が出来るから…ね?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : にこりと微笑んで。
[メイン] スイムスイム : 「…………!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あっ、そんな顔しないで…ええっと、その…!」
[メイン] スイムスイム : ……優しい……お姉さん……。
[メイン] スイムスイム : ……あたたかい。
[メイン] スイムスイム : 「……ありがとう、お姉さん」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
こんな子どもだから、こそ…かしら。
迷子になってるなんて、そんなの可愛そうだし…
[メイン] 陽夏木 ミカン : 助けてあげるのが、魔法少女として…私としても、だもの。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ううん、いいのよ!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「人助けは趣味のようなものだし…あなたのような子を、ほっとけるわけないじゃない!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 胸を自信ありげに叩きながら。
[メイン]
スイムスイム :
「……………」
温もりを求めるように、ミカンの手をぎゅっ、と握り。
[メイン] スイムスイム : 「……人助け……」
[メイン] スイムスイム : 「……お姉さんの趣味……助けること……私を助けるのも……趣味……?」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
さっきの雨みたいに、重いことを引きずってても仕方ない。
……桃の事は切り替えないと、ダメ、よね。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「んー…半分くらいはそうで、でも…ほっとけないのも事実だもの」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「助け合うのが人…みたいなこと、お母さんとかから言われたりしない?」
[メイン]
スイムスイム :
「………?」
小首を傾げながら。
[メイン] スイムスイム : 「……わかんない」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「わからない……そうなのね」
うーん、と腕を組み。
[メイン]
スイムスイム :
……分かんない、でも……。
お姉さん………お母さん、みたい
[メイン] スイムスイム : 「………ママ」
[メイン] スイムスイム : ミカンを見て、ぽつりとそう呟く。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…え、ママ……ママ!?」
[メイン] スイムスイム : 「……ママよりも……ママ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : …ま、まだ…高校生なんだけどな…?
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「そ、そんな風に見えるかしら…私…?」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
ママよりもママ……母性…?
う、ううーん…ふわっとしてて、つかみどころのない子ね…
[メイン] スイムスイム : 無表情で、黙ったまま、頷く。
[メイン] 陽夏木 ミカン : だからこそ…どこかに吹き飛ばされてしまいそうで、心配になっちゃうんだけど…
[メイン] スイムスイム : そのまま、ミカンの手を、クイ、クイ、と引っ張り。
[メイン] スイムスイム : 「……おうち、帰りたい」
[メイン] 陽夏木 ミカン : その様子を見て、ぎゅっとその手を握って立ち上がる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……そうね、寂しいものね」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「じゃあ、帰るまで…あなた”ママ”になっても、いいかしら」
[メイン] スイムスイム : 「…………!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 鞄から一つ、何かを取り出して。
[メイン] スイムスイム : 少し目を見開き、ミカンの目をじっと見て。
[メイン] スイムスイム : 二度、頷く。
[メイン]
スイムスイム :
「………?」
ミカンのもう片方の手へと、目線を移し。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…ふふ、それは良かったわ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 手に持ったのは、”蜜柑”。
[メイン] スイムスイム : 「………みかん?」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「そうよ。好きな果物だから、あなたにもあげたくなっちゃったの」
皮つきのそれを、彼女へと手渡して。
[メイン]
スイムスイム :
「…………」
小さな手で、鮮やかな色合いのみかんを受け取り。
[メイン]
スイムスイム :
「ママと一緒の色」
再び、ミカンへと目線を動かす。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「一緒…そう言われると、ちょっと嬉しいわ」
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : そう言って、蜜柑の鮮やかさにも負けない、光る笑顔で返す。
[メイン] スイムスイム : ……嬉しがってる……ママが嬉しいと
[メイン] スイムスイム : 私も、嬉しい、かも……。
[メイン] スイムスイム : 「………ママ、笑顔」
[メイン] 陽夏木 ミカン : …うん、喜んでくれてるみたいで…何よりだわ。
[メイン] スイムスイム : 何気なく、そうぽつりと漏らし。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あ……ひゃ、顔に…出てたかしら……!?」
[メイン] スイムスイム : 「いっぱい、出てた」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 思わず、空いていた手で自らの顔にむにむにと触れる。
[メイン]
スイムスイム :
「こんな風」
そう言い、自分の頬へ指をあて、軽く持ち上げる
[メイン] スイムスイム : 笑顔のような顔を、作ってみせる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「そ、そうだったのね……ん」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あら…あなた、可愛いじゃない…!!」
[メイン] スイムスイム : 「…………え?」
[メイン] スイムスイム : きょとん、とした表情になり。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
その作られていても変わらずの、その”笑顔”に。
思わず本心が、出て。
[メイン] スイムスイム : 「………可愛い……?」
[メイン]
スイムスイム :
坂凪綾名の脳裏に過る、"可愛い"の象徴。
童話のお姫様が。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「ああ、っと……み、みかんと同じくらい可愛かったわ!中々に!」
慌てて、その本心を隠すように変な例えで。
[メイン] スイムスイム : 「……みかん」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……ええ、とっても…よ」
[メイン]
スイムスイム :
可愛い……みかん……。
可愛い……お姫様……。
[メイン]
スイムスイム :
みかん……お姫様……。
………?
[メイン] 陽夏木 ミカン : 安心させるように、にこりと笑いながら。
[メイン] スイムスイム : 複雑(?)な思考を巡らせ
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「ど、どうか…した?」
きょとんとしたような顔で傾く彼女に。
[メイン] スイムスイム : また、何を考えているのか分からない、ぼーっとした表情になる。
[メイン] スイムスイム : 「…………ううん」
[メイン] スイムスイム : 首を左右に振り。
[メイン] スイムスイム : クイクイ、とミカンの手を引っ張り。
[メイン] スイムスイム : 「……ママの名前、知りたい」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…あ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : …そういえば名乗っていなかった。うっかりしてたわ…!!
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……陽夏木 ミカン、よ」
[メイン] スイムスイム : 「………ミカン」
[メイン] スイムスイム : 手に持ったみかんへと視線を動かしながら。
[メイン] スイムスイム : 最後、ミカンへ目線を戻し、指を差し。
[メイン] スイムスイム : 「お姫様」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「えっ」
[メイン]
スイムスイム :
可愛い、みかん。可愛い、お姫様。
だから、みかん、お姫様。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「え、えええ………!?!」
[メイン] スイムスイム : 少し目の奥が、キラキラと輝く。
[メイン] スイムスイム : 「私も、ママみたいになりたい」
[メイン] 陽夏木 ミカン : お、お姫様…!?それって、この子にお姫様って…ていうか、褒め言葉…!?
[メイン] 陽夏木 ミカン : あわあわ、汗が出て顔が紅潮する。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 『呪い』のお陰か、後ろにあるごみ箱がありえない角度で吹っ飛んで行ったが。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…あなたも、私みたいに…」
[メイン]
スイムスイム :
「………?」
ミカンの後ろの、吹き飛んで行ったゴミ箱へ目をやりつつ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「それなら……”困ってる人を助ける”」
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「それをすれば、きっと…私みたいになれるわ」
[メイン] スイムスイム : 「……困ってる、人……助ける……」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「……難しい、かしら…?」
さっき、わからないと言っていた彼女に、確認するように。
[メイン] スイムスイム : 「……むずかしい」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ううん、始め立てって、そういうものよね…」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ううん、と唸り。
[メイン] スイムスイム : 「……んむぅ」
[メイン] スイムスイム : 少し不満げな表情を漏らしながら。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「じゃあそうね……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あなたがされて、嬉しかったこと」
[メイン] スイムスイム : 「…………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「これを…他のみんな。お友達や、家族にしてあげるといいの」
[メイン] スイムスイム : 「………嬉しかったこと…… ……これ」
[メイン] スイムスイム : そう言い、繋いだ手を見つめ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 伝わったかしら…?と、少し不安な顔で覗き込みつつ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あ、っ……まほ…じゃなった、人として当然よ!」
[メイン]
スイムスイム :
「………?」
……まほ?
[メイン] スイムスイム : 顔に少しだけ、影が差し込みながらも─────。
[メイン] スイムスイム : 「………わかんないけど、わかった」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
言いつつ、褒め言葉には照れたように顔が赤くなる。
それと同タイミングで、ゴミ箱が上空へと吹っ飛んだ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「んん」
[メイン]
スイムスイム :
「………???」
空を見上げ、吹き飛んで行ったゴミ箱を目で追いながら。
[メイン] スイムスイム : 「あれ、なーに?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「え、あああ……!?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : そちらを見ると、吹っ飛んでいくゴミ箱一つ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「えっと、その…私が緊張したり、嬉しかったりすると、周りに”不幸”が起きちゃう…のよ」
[メイン] スイムスイム : 「……大変そう」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 信じられないかもしれないけどね、とつぶやきつつ。
[メイン]
スイムスイム :
そういう人も、いるんだ。
といった顔をしながら。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「あはは……」
ちっちゃい子にすら、同情されちゃってる……
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ああ、そうだ」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「…あなたのお名前も、聞いていいかしら?」
ぎゅっと、その手を握り直して。
[メイン] スイムスイム : 「………ん」
[メイン] スイムスイム : ミカンの顔を見上げ。
[メイン] スイムスイム : 「─────坂凪 綾名」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「”ママ”が”あなた”なんて……母親らしくないじゃない」
[メイン] スイムスイム : 淡々と、そう述べて口を閉じる。
[メイン] スイムスイム : 「………そうかも」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「綾名、ね」
述べられた言葉に、また微笑んで。
[メイン] スイムスイム : 思慮深い表情を浮かべながら、ミカンの言葉を吟味し。
[メイン] スイムスイム : 「……うん、綾名」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「うん、しっかり覚えたわ」
何度か頷き、刻み付けるようにして。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…それじゃあ…親御さんも寂しがってるかもしれないわね」
[メイン] 陽夏木 ミカン : すっかり夕暮れに染まった、街並みを感慨深く見渡して。
[メイン] スイムスイム : 「……帰りたい」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「しっかり帰らせるわよ、ママに任せなさい!」
どん、と胸を叩きつつ。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
……自分でママとか言うの、結構…恥ずかしい、わね…!
[メイン] 陽夏木 ミカン : 照れた顔は逸らしながらも。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ゴミ箱はさらに上へ、空高く飛んで行ったのだ。
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン : その日は、土砂降りだった。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……はあ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「魔女を倒したっていうのに、結界から出ても雨なんて…ついてないわね」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 溜息一つ零しながら、雨の中黄色の少女は自嘲気味に笑う。
[メイン] 陽夏木 ミカン : そう、魔女。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 『私が私である』ために、倒さなければならない存在。
[メイン] 陽夏木 ミカン : そして、自らの元同胞。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「……やんなるわね」
落とされたグリーフシードで、その感情と気力をこそぎ落とす。
[メイン] 陽夏木 ミカン : しかも、最近は魔女の気配も少ない。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 噂によれば、『魔法少女狩り』なんてものが横行してるみたいだけど────
[メイン]
:
─────代わりに、ミカンの背後に、気配。
魔女の気配ではない、別の─────
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…!」
[メイン] : 振り向くと、そこには─────
[メイン] 陽夏木 ミカン : ────ピキン、感じ取り。そちらへと顔を向けると。
[メイン]
スイムスイム :
土砂降りの雨の中、桜色の髪をした。
ミカンと同程度の身長の少女が。
[メイン] スイムスイム : 禍々しい形をした槍を片手に
[メイン] スイムスイム : ミカンを、じっと見ていた。
[メイン] スイムスイム : 「…………………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…ごめんなさい、魔女は…もう刈っちゃったわ」
[メイン] スイムスイム : 私は、お姫様になる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 現われた”仲間”へと、謝り。
[メイン] スイムスイム : だから、魔法少女を、倒す。
[メイン] スイムスイム : そう、言われたから。
[メイン] スイムスイム : だから今日も、待っていた。
[メイン] スイムスイム : 魔女を倒した後の、疲れ果てた魔法少女を。
[メイン]
スイムスイム :
「……………」
ミカンの声に、その少女は顔を何一つ変えず。
[メイン] スイムスイム : ただ、ミカンの顔を、じっと見ていた。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「それでも必要なら……あなたを”助ける”けど、どうかしら…?」
そう、伺うように顔を見て。
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] スイムスイム : チャキッ。
[メイン] スイムスイム : 刃先を、ミカンへ向ける。
[メイン] スイムスイム : 私は、お姫様になる。
[メイン] スイムスイム : お姫様に、なる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ッ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「な、にを…!?」
[メイン] スイムスイム : なりたい、お姫様のように、キラキラ、輝きたい。
[メイン] スイムスイム : お姫様に、なりたい。
[メイン]
スイムスイム :
「…………ママ」
そう、ぽつりと、ミカンにも聞こえない声を漏らしながら。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
向いた矛先へと視線が写る。
……突然向けられた敵意に、冷や汗がたらり。
[メイン]
スイムスイム :
お姫様になるために、私は
─────ママを、殺す。
[メイン] スイムスイム : 殺さなきゃ、いけない。
[メイン] スイムスイム : 優しいママだった、暖かだった。
[メイン] スイムスイム : でも、殺さなきゃいけない。
[メイン] スイムスイム : 「………知ってる?」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
当の本人は、目の前の彼女なんて知らずに。
綾名が…”魔法少女”なんてものに、巻き込まれてるなんてわからず。
[メイン] スイムスイム : 「魔法少女は、足りない」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……」
[メイン] スイムスイム : そう言い、ミカンの持つグリーフシードへ目をやり。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ぐ、と…その話へと、耳を傾ける。
[メイン] スイムスイム : 「多すぎた、強すぎた」
[メイン] スイムスイム : 「だから、減らさないといけない」
[メイン] スイムスイム : 「─────キュゥべぇが、そう言ってた」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 心を落ち着かせるために、雨へと混じる、汗を止めるために。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…!?」
[メイン] スイムスイム : 「魔女を倒せないと、魔法少女は、力を失っちゃう」
[メイン] スイムスイム : 「"魔法少女"じゃ、無くなっちゃう」
[メイン] スイムスイム : 「私は─────"お姫様"に、なりたい」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「まさか、『魔法少女狩り』って……あなたの、しわざ…なの?」
[メイン] スイムスイム : ミカンの言葉に、頷く。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
「……お姫、様」
ぼそり、呟いて。
[メイン] スイムスイム : 「減らしてる」
[メイン] スイムスイム : 「足りないから」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……同じ魔法少女、よね」
[メイン] スイムスイム : 無表情で、淡々と続ける。ミカンに刃を向けながら。
[メイン]
スイムスイム :
「…………」
頷く。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「”命”を…奪ってる、のよ?」
[メイン] スイムスイム : 「………………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : その言葉に、顔が険しくなる…と同時に。
[メイン] スイムスイム : 「………"願い"のため」
[メイン] スイムスイム : そう、返す。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
汗が、一層噴き出る。
心臓が、高鳴ってしまう。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……願い?」
[メイン] スイムスイム : 「………何もしなかったら─────私も、"ママ"も、魔法少女じゃなくなっちゃう」
[メイン] スイムスイム : 「私は、お姫様になりたい」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ……”何か”に一心不乱になる、この純粋までな真っすぐさに。
[メイン] スイムスイム : 「絵本で見た、キラキラ輝く、みんなから憧れられる、お姫様、綺麗で、可愛い、お姫様」
[メイン] 陽夏木 ミカン : …こんなの、って……おかしいじゃ……え。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「お姫様……」
[メイン] スイムスイム : 「うん」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……それと、”ママ”」
[メイン] スイムスイム : ぴちゃりと、水音を立てて、徐々に、ミカンへと距離を縮めていく。
[メイン] スイムスイム : 歩いて、歩いて、歩いて。
[メイン] 陽夏木 ミカン : その歩きに、気圧されるように。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 一歩、引き下がって。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 聞き違いかもしれない。でも、この二つの言葉は、つい最近聞いた言葉で…
[メイン] 陽夏木 ミカン : ……でも、そんな。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 確かめるように
[メイン] 陽夏木 ミカン : そうであってほしくない、ように
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あなたは」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…私に、会った事が、ある…子で」
[メイン] スイムスイム : 「…………」
[メイン] スイムスイム : ぴちゃり、ぴちゃり。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「名前は…」
[メイン] スイムスイム : ぴちゃり、ぴちゃり。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「坂凪綾名…」
[メイン] スイムスイム : ぴちゃ─────………。
[メイン] スイムスイム : 足が止まり。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 水音が、声と共に反響する。
[メイン]
スイムスイム :
何を考えているのか分からない、淡々とした無表情を
ミカンへ向け、じっと見つめる。
[メイン] スイムスイム : 「………………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……」
[メイン] スイムスイム : ざあああ。と雨の音だけが、二人の耳を支配し。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 顔を 彼女へと向けた
[メイン] スイムスイム : 肌を突き刺すような寒い風が、少し吹き。
[メイン] スイムスイム : 首を、ほんの少しだけ傾げ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 唇を噛み、悲しげな目で、ぎゅっと。
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : 「………ひさしぶり、"ママ"」
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : 淡々と、そう述べ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「────ッ」
[メイン] スイムスイム : 姿が、消えた─────。
[メイン] スイムスイム : いや、正確には……雨により溜まる水の中へと、一瞬で潜った。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 五月蠅い程に振っていた雨音が、掻き消えた。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 正確には、”聞きたくない言葉”が耳を支配したから。
[メイン] スイムスイム : 彼女の能力は、あらゆる物体の中へでも、"潜る"ことが可能。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ……っ、そんな、こと…って
[メイン] スイムスイム : ミカンの目の前にはまた、誰もいない雨の景色だけが取り残され。
[メイン] 陽夏木 ミカン : そして、そちらに注意を注がれ…その”潜航”を見逃す。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……ッ、あ…どこに…!?」
[メイン] スイムスイム : すぅぅぅ……。
[メイン] スイムスイム : ミカンの背後で、ゆっくり、ゆっくりと、地面の中から現れ。
[メイン] スイムスイム : ─────刃を、ミカンの頚髄目掛け、落とす。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…ッ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 光の反射、その一瞬に見えた姿を捕らえ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 振り向き、その刃をボウガンの矢先で止める。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ……しかし、所詮は射撃武器と槍。
[メイン] スイムスイム : 「…………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ぐぐ、と拮抗しても、押し負けるのはこちら。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…な、ッ…んで…!あなたが……!!」
[メイン] スイムスイム : 「………お姫様に、なりたいから」
[メイン] スイムスイム : 静かな口調で、刃を、押す。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「お姫様……なんて、そんなに、なりたい…ものなの…!?」
[メイン] スイムスイム : 何度も人を殺してきたその刃を、"ママ"へ向ける。
[メイン] スイムスイム : 斬り殺すために、願いを叶えるために。
[メイン] スイムスイム : 「……なり、たい」
[メイン] 陽夏木 ミカン : カチリ、と片手で矢を構え。
[メイン] スイムスイム : ミカンの問いに─────僅かな隙が生じ。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
放つ、が。
彼女を穿つため、でもなく。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 槍先を、そこから変えるために。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……どうして…!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「他人を、押しのけても…なりたい、ものなの…!?」
[メイン] スイムスイム : その矢は、スイムスイムの腕へ─────
[メイン] スイムスイム : すぅぅ。
[メイン] スイムスイム : ─────刺さらず、すり抜けていく。
[メイン] スイムスイム : 「……………うるさい」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…なッ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 自らの矢が、刺さらない。
[メイン] スイムスイム : 矢が通過したのを目にし、ミカンの腹部へ思いっきり蹴りの一撃を叩き込み
[メイン] スイムスイム : 一定距離だけ離す。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
無論、当てるつもりもなかったが。
矢はかつん、と壁へ虚しい音を立てた。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ッ、ぐ、ぅぁあああっ…!」
[メイン] スイムスイム : 魔法少女は、人を越えた力を有する。
[メイン] スイムスイム : その蹴りは、車程度であれば破壊可能であり。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 魔法少女は、人を越えた力。
[メイン] スイムスイム : 目を細め、吹き飛ぶミカンを捉え。
[メイン] 陽夏木 ミカン : だからこそ、その蹴りは……自らの腹へと重い衝撃を残した。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「が、ッ、ふっ」
[メイン]
スイムスイム :
地を蹴り、再び接近。
その際に、アスファルトの大地が削られる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ぼごん、と。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 壁へと激突して。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ッ、……私は、あなたと…戦いたくなんて、ない…!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あなたも…そうじゃ、ないの…!」
[メイン]
スイムスイム :
そして、手に持った禍々しい刃により
助走を付け加えた、ミカンの鎖骨辺りから膵臓位置まで一文字を描くように、袈裟斬り─────
[メイン] スイムスイム : が
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] スイムスイム : ミカンの、その問いに、スピードが緩む。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
壁へと埋まったまま。
そのままであれば刈り取られた命。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……っ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : むしろ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 踏み込み、綾名の方へと一歩、二歩踏み出る。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 槍の範囲から逃れ…彼女を、掴もうとするように。
[メイン] スイムスイム : 「………っ……!?」
[メイン] スイムスイム : 液状化を発動前に、捕捉され
[メイン] スイムスイム : 攻撃動作が止まる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…ッ……!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : やっとのごとく、槍から逃れたものの。
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] スイムスイム : 冷たい瞳で、ミカンをじっと見つめ。
[メイン] スイムスイム : 「……ママは、戦いたくなくても」
[メイン] スイムスイム : 「私は……戦う」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ただ…彼女を見つめる。
[メイン] スイムスイム : 「……ママも、グリーフシード、欲しいでしょ?」
[メイン] スイムスイム : 「足りないよ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ……あんな魔力、子どもが出せるものじゃ、ない…!
[メイン] スイムスイム : 「魔女の数が、足りないよ?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 一体どれだけの人と戦ってきたの…!
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「私だって、『人』であるためには魔女だって必要だわ」
[メイン] スイムスイム : 「このままじゃ、私も、ママも、もう二度と魔法が使えなくなっちゃう」
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 雨の中、冷える体で。見上げるように彼女を見つめる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「でも、ね」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「こんな殺し合わなくても、戦わなくても……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「私たちが私たちであれる、別の方法がきっとあるはずだわ」
[メイン] スイムスイム : ミカンの拘束を力尽くで振り解き。
[メイン] スイムスイム : 一閃。
[メイン] スイムスイム : 「どうやって?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ッ、ぁ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 自分よりも何倍もあるかのような力で、払われる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 吹き飛ばされ、ごろごろと地面を回るが。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「わからない、わ」
[メイン]
スイムスイム :
魔法少女は─────どれだけ傷つけても、死なない。
例え切り刻まれても、バラバラになっても、死なない。
[メイン] スイムスイム : もう、人という体は、魂の容器に過ぎない。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 石が肌に傷を付け、服を破れ。
[メイン] スイムスイム : スイムスイムの矛先から垂れる、ミカンの血液。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 身もボロボロだが、それでも回る体を止める。
[メイン] スイムスイム : 「………」
[メイン] スイムスイム : 転がるミカンを見下げるように、じっと見て。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「でも、わからないから、こそ」
[メイン] スイムスイム : ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ、と一歩ずつ近づき。
[メイン] スイムスイム : 「…………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「私たちは、話し合うの」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「話し合って、”人と人が助け合う”の」
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 雨の中、それでも輝きを失わない鮮やかな黄色。
[メイン] スイムスイム : …………反撃、しないの?
[メイン] スイムスイム : ミカンのすぐそばに立ち、ミカンの顔へ矛を向ける。
[メイン] スイムスイム : 「これでも、話し合うの?」
[メイン] スイムスイム : 「助け合うの?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ええ」
[メイン]
スイムスイム :
これまで殺してきた魔法少女達は
抵抗してきた、死に物狂いで
[メイン] 陽夏木 ミカン : 矛は、自らへ。
[メイン]
スイムスイム :
だって、生きてるから、死にたくないから
だから戦う、逃げる、その2択ばかりだった。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 『呪い』によって、吹き荒れる嵐。
[メイン] 陽夏木 ミカン : けれど。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 真っすぐ、彼女の瞳を見据え。
[メイン] スイムスイム : ………でも、ママは……
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] スイムスイム : 逃げない。
[メイン] スイムスイム : そして、戦わない。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……殺し合うなんて、出来ないわよ」
[メイン] スイムスイム : ………どうして?
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「だって」
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「綾名が、そんな顔してるのに」
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] スイムスイム : 「………え」
[メイン] スイムスイム : ざあああ。と土砂降りの雨の中。
[メイン] スイムスイム : スイムスイムはふと、自らの頬に手を添え。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ただ、その目は悲しげに。
[メイン] スイムスイム : そこからしたり落ちる─────
[メイン] 陽夏木 ミカン : ……”母”が”子”を見る目のように。
[メイン] スイムスイム : ………熱い涙を、感じた。
[メイン] スイムスイム : 気がつかなかった。
[メイン] スイムスイム : 泣いていた。
[メイン] スイムスイム : スイムスイムは目を開き、自分でも訳が分からない、といった表情でいた。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……ずっと、これを繰り返してたのね」
[メイン] スイムスイム : 「………………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…自分の思いが、わからなくなってしまって…」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……話し合い、ましょう」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「綾名」
[メイン] スイムスイム : 「…………マ、マ……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : その瞳に、手をかざして。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 降る大雨、けれどしっかりと。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ”涙”だけを、掬い取った。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……もう、いいの…」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あなたがこの方法で”人助け”をする必要なんて、どこにもないわ」
[メイン] スイムスイム : 「………人、助け……?」
[メイン] スイムスイム : 「……私が……?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : こくり、それに頷いて。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……私が、こうして生きているのは」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あなたが…他の魔法少女を刈って、私にも魔女の取り分が出来たから、かもしれないわ」
[メイン] スイムスイム : 「……………………」
[メイン] スイムスイム : 「…………」
[メイン] スイムスイム : ─────変身を、解き。
[メイン] スイムスイム : あの時に出会った、幼い少女が、ミカンの前に。
[メイン] 陽夏木 ミカン : それは、間違いなく…”人助け”だから。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「お帰りなさい、綾名」
[メイン] スイムスイム : 「……………ただ……いま……」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
それを、ゆっくりと…受け止めるように。
ぎゅっと、抱き締めて。
[メイン] スイムスイム : ……私は、私は……人助けを、していた……?
[メイン] スイムスイム : ママ、みたいに……?
[メイン] スイムスイム : キラキラ輝いてて、カッコよくて、眩しい、ママみたいに……?
[メイン] スイムスイム : お姫様みたいな、ママ、みたいに……?
[メイン] スイムスイム : 「ぁ………」
[メイン] スイムスイム : 抵抗も特にせず、そのまま抱き締められ─────。
[メイン] スイムスイム : …………それって、つまり……。
[メイン] スイムスイム : もう、私………。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
ざあざあ、降りしきる雨は。
次第に、ぽつぽつと、止んでいき。
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : ─────"お姫様"に、なってたの……?
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……ふふ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ゆっくりと、背中を撫でて。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……あなたは、しっかりと…お姫様、よ」
[メイン] スイムスイム : 「……マ、マ……」
[メイン] スイムスイム : 震える声で、喉から絞るように、小さな声で。
[メイン] スイムスイム : 潤んだ瞳で、ミカンを見上げていた。
[メイン] スイムスイム : ぎゅ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ごそり、ポケットから”何か”を出して。
[メイン] スイムスイム : その温もりに、甘えるように抱き着き。
[メイン] 陽夏木 ミカン : その小さな声に、どこか滲んでしまって。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……ぁ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 抱き着かえされて、思わず。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 雨なんて降ってないのに、頬を水が伝った。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……っ、ぐ…」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…あなたも、このみかんに似合う…お姫様、よ」
[メイン] スイムスイム : 「…………えへ、えへへ」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
ぽん、と。
またいつかのようにみかんを置いて。
[メイン] スイムスイム : ─────綾名は、初めて、笑みを見せた。
[メイン] スイムスイム : 誰にも見せたことのない、今まで作ったこともない。
[メイン] スイムスイム : 純粋な笑顔を。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ────あ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : その顔は、シトラス色の鮮やかな笑み。
[メイン]
スイムスイム :
"太陽"に照らされ、土から逞しく伸びる芽のように。
少女に、感情が宿されていき。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「私……立派な、ママ…で、あれた…かしら…」
[メイン]
スイムスイム :
自分が一体何者なのか分からなかった不幸なお姫様は
それはそれは素敵な"魔法"で、笑顔を取り戻し
[メイン]
陽夏木 ミカン :
涙ぐんで、思わず。
笑いながら、声もかすれてしまい。
[メイン] スイムスイム : 「………うん」
[メイン] スイムスイム : 柔らかな声色で、頷き。
[メイン] スイムスイム : 「……私の、大切な、ママ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ん、ん……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「そんな言葉、言われても嬉しくない、わよ…」
[メイン] 陽夏木 ミカン : けれど、ああ。
[メイン] 陽夏木 ミカン : ”不幸”にも雨は上がってしまい。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 晴れた”太陽”は、二人のお姫様の素顔をぴかぴかと照らしてしまった。
[メイン] :
[メイン] :
[メイン] :
[メイン] : ザシュッ。
[メイン] : ミカンの目の前で、鮮血が飛び上がる。
[メイン] スイムスイム : 「─────ぁ」
[メイン] スイムスイム : ミカンの腕の中で、徐々に力が抜けていく、小さな命。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「────え、ぁ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 視界を奪った、鮮やかな────赫。
[メイン] : 「はぁ……!はぁ……!……ヘッ、へへへ!やった、ついに、やった……!!」
[メイン] : 「無敵の魔法少女を、この手で……!!!仇を取れた!!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ぎゅっと抱き締めていたのに、そこから温もりが消えるような。
[メイン] : 「あははははははははは!!!ざまぁみやがれ!!!スイムスイム!!!!」
[メイン] : 綾名の背中には─────矢が、深く突き刺さっており。
[メイン] : べったりと、赤い血が広がっていき。
[メイン] 陽夏木 ミカン : また 手から 零れ落ちる 命 が 消え て
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「っ、ぁ……」
[メイン]
:
その矢を放った、魔法少女らしき者は、ミカンの迎撃を読み
屋根の上へ飛び上がり、咄嗟にこの場から去っていった。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 私がいたのに、それを防ぐことが出来なかった。
[メイン] スイムスイム : 「ぁ……れ………」
[メイン] 陽夏木 ミカン : それは間違いなく、自らの責任で。
[メイン] スイムスイム : 掠れた声が、今にも消えそうな命の、少女の喉から。
[メイン] スイムスイム : 「……マ、マ………?」
[メイン]
陽夏木 ミカン :
くらくらと、目の前に染まる視界は
頭の思考をも、赤色に染め上げていった。
[メイン] スイムスイム : 「いた、い……」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…っ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : は、と我に帰り。
[メイン] スイムスイム : 「……………」
[メイン] スイムスイム : ミカンの裾を、ぎゅっと、握り。
[メイン] スイムスイム : 「………ばちが、あたっちゃった、の……?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 掠れた声は、痛々しいほどにミカンへと。
[メイン] スイムスイム : ぼたぼたと、アスファルトの上で血の水溜が広がっていき。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「…っ、そんな事、ないわ…!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「助け合うって、言ったじゃない…」
[メイン] スイムスイム : 「…………」
[メイン] スイムスイム : 少女は、静かに、瞼を、閉じていき─────。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
しっかりと離さないように 手放さないように
もう逃したくないように
[メイン] スイムスイム : ミカンを離すまいと掴んでいた手からも力が、抜け落ちていき……。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「っ、あ…!」
[メイン] スイムスイム : ─────糸が切れた、操り人形のように。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「そんなの、ダメよ…!お願い…!」
[メイン] スイムスイム : ぐったりと。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
その手を、握り直す。
まるで子供のように、嫌嫌と手放したくない表れで。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「………ッ」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 掌から、力が失われていく。
[メイン] 陽夏木 ミカン : それをミカン自身、握る力も薄れていく。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 先ほどの戦闘で、ダメージは蓄積していた。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 疲労と、困憊の中
[メイン] 陽夏木 ミカン : ただ、ゆったりと
[メイン] 陽夏木 ミカン : 自らの目も……
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「………ッ、く」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ふり絞る、限界まで
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「ねえ、■■■■ッ────!!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : その名前は、『呪い』の主。
[メイン] 陽夏木 ミカン : その名を、叫ぶ
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「聞こえてるんでしょう、ずっと私の近くにいるんだから…!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「私の願い、覚えてるわよね…!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ────『自分を含めた家族と工場を守りたい』
[メイン] 陽夏木 ミカン : だから、こう叫ぶ
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「────私の”娘”を、守れッ!!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン : びゅお。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 二人を中心に風が、吹き荒れる。
[メイン] 陽夏木 ミカン : しかして、その風は。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 濁りきった二人の魂の器を。その、感情の淀みを────
[メイン] 陽夏木 ミカン : ────『呪い』として、吹き飛ばしていった。
[メイン]
陽夏木 ミカン :
『魔法少女は─────どれだけ傷つけても、死なない。
例え切り刻まれても、バラバラになっても、死なない。』
[メイン] 陽夏木 ミカン : じゃあ、死ぬときはいつ?
[メイン] 陽夏木 ミカン : 少女から希望が、消えた時。
[メイン] 陽夏木 ミカン : じゃあ────
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「紗名ッ!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「あなたは、ここで『おしまい』で…いいの…!?」
[メイン] 陽夏木 ミカン : ぎゅっと、その腕を掴む。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「まだ、あなた……」
[メイン] : ────『私も、ママみたいになりたい』
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「私みたいに、なってないじゃない!!!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン :
[メイン] 陽夏木 ミカン : 『お姫様になる』が、あなたの希望”だった”なら
[メイン] 陽夏木 ミカン : 今の希望は。
[メイン] 陽夏木 ミカン : 違うはずよ、ここで終わっていいはずが無い。
[メイン] 陽夏木 ミカン : だって
[メイン] 陽夏木 ミカン : 「私は…ここで諦めるような子に、育てた覚えはないもの…!!」
[メイン] 陽夏木 ミカン : そう、叫び続ける。
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : 暗い景色。無重力みたいな場所。ふわふわと私は、浮いていた。
[メイン] スイムスイム : きっと、これは……魂の視点。
[メイン] スイムスイム : 私はもうすぐ死んじゃ─────
[メイン] : 『紗名ッ!』
[メイン] スイムスイム : ………え
[メイン] : 『あなたは、ここで『おしまい』で…いいの…!?』
[メイン] スイムスイム : どこからか分からない、でも……
[メイン] スイムスイム : しっかりと、聞こえる。
[メイン] スイムスイム : 耳に、頭に、胸に
[メイン] スイムスイム : ─────心に
[メイン] : 『まだ、あなた……』
[メイン] : 『私みたいに、なってないじゃない!!!!』
[メイン] スイムスイム : ──────────
[メイン] スイムスイム : ─────ママ……
[メイン] スイムスイム : ……結局、私の手には、死んだという事実しか残っていない。
[メイン] スイムスイム : それも酸っぱく漬けられた飛びっきりの
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : ”不幸”。
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : それを…
[メイン] スイムスイム : 『運が無かった』として割り切るのは、かんたん。
[メイン] スイムスイム : ─────でも
[メイン] スイムスイム : 割り切ってしまったら
[メイン]
スイムスイム :
死
この"運命"を飲み込んでしまったら。
[メイン] スイムスイム : 私は─────ママは─────
[メイン] スイムスイム : 『運命に飲み込まれるしかなかった』の?
[メイン] スイムスイム : ……………………………………。
[メイン] スイムスイム : …………………………………。
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : いいはずが、ない。
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : 魔法少女は希望を叶える少女。
[メイン] スイムスイム : 誰かが言っていた。そんな言葉。
[メイン] スイムスイム : そして、ママの想いを、裏切ることなんか、出来ない。
[メイン] スイムスイム : 私が、私でなくなってしまった事は、とっても恐ろしい。
[メイン] スイムスイム : 恐怖で身も震える、これ以上不幸を背負いたくもない。
[メイン] スイムスイム : ただ、今は。
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム :
[メイン]
スイムスイム :
魔法少女
『自らが殺してしまった"同胞"のために』
[メイン] スイムスイム : 『その罪を背負うように』
[メイン] スイムスイム : 『生きないと』
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム : そして少女は─────
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム :
[メイン] スイムスイム :
[メイン] : 雨上がりは
[メイン] : 夕焼けが、とても綺麗らしい。
[メイン] : ひと気の無い通りで
[メイン] : 橙色の光を背に
[メイン] :
[メイン] : "2人"のシルエットが
[メイン] :
[メイン] : 手を繋いで
[メイン] : お互いの温もりを感じ
[メイン] : ─────今日も、生きるのであった。
[メイン] :
[メイン] :
[メイン] :
[メイン] : その”2人”を表す童話の題名は
[メイン]
:
かぞく
────『似た者同士のお姫様』
[メイン] :
[メイン] :
[メイン] :